日曜日に通っている教会に
一人で杖をついて来るおじいさんがいます。
ピートさん、という人で
教会の人がみんな知っている人。
よく子供たちにポケットから出したお菓子を配っていて、
小学生の子供たちのそばでボーっとたたずんでいた私にまで
見かけたことないけど、
引っ越してきたの?
と、
お菓子をくれて頭をなでたことがありました。 笑
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昼間はまだまだ暖かいのでまだ緑の芝生
と、
凍った紅葉の葉っぱ |
子供たちを学校に送る道の途中に
牛牧場があります。
間に点々と家があるから
3つか4つの牧場があるのかと思っていたら
奥の方でつながっているらしい。
そこは先祖代々受け継がれてきた
ピートおじいさんの牛牧場です。
私たちが越してきたこの町は
消防署もできたのに
まだ独立した郵便番号がなくって
住所にはちょっと離れた隣町の名前が入っています。
ここ4,5年でどんどん開発が進んで
お店もたくさんできたんだけどね。
私たちが引っ越してきてからの2年の間にも
森や牧場だったところに
大きな住宅地が次々と出没、
大きな町で働く人が帰って来る
ベッドタウンになりつつあります。
それでもまだまだ都会とは程遠いのんびりした環境で
私たちにとってはまだまだ田舎なんだけど、
昔からここに住む住人はみんな口を揃えて
「変わってしまったねえ。。。」と言います。
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ここも青々とした元気な草と葉っぱを閉じたクローバー |
息子たちの学校に行く時、
ひとつだけ横切るちょっと大きな交差点は
昔は2車線の細い田舎道だったそうで、
今ではデイケアになっている道路脇の建物は
この辺りにあるただひとつのハンバーガーショップで、
地域の人の憩いの場だったそうです。
15年ほど前のある日、
そんな田舎の集落に
大型チェーンのスーパーが来ることに!
みんな便利になると大喜び!
スーパーの偉い手さんが
店じまいした後のハンバーガー屋で
辺りの住民の人達と
会合を開くことになりました。
「ここにある牛牧場ではたくさんのハエが発生して
健康上にとても悪い影響を及ぼしています。
署名を集めて牛牧場を閉鎖させれば、
臭いもなくなるし、ハエもいなくなって
みなさん快適な生活がおくれますよ」
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日陰で秋らしい色合いになってる芝生 |
テンポよく笑顔で話す、
びしっとスーツを着た偉い手さんの話を
住民たちも笑顔で聞いて、
振る舞われたたくさんのジュースやクッキーも美味しくいただいて、
和やかなムードで会が終わってみんなが帰った後、
テーブルの上に置かれたノートの
牛牧場閉鎖の為の署名蘭には
住民の名前はひとつも記入されていなかったそうです。
先祖代々、
地域の人達のお世話をたくさんして、
みんなから慕われていた家族の牛牧場を
ハエや臭いくらいでスーパーの為に閉鎖させようなんて思った人は
誰一人いなかったんだよ
息子の高校のフットボールの試合で隣に座ったお年寄りは
自分のことのように誇らしげに
その当時の話をしてくれました。
そのフットボール場も、
高校校舎も駐車場も全部、
ピートさんが州に寄付した土地に
4年前に建ちました。
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日向の芝生はまだまだ青い |
結局大型スーパーは正統な値段でピートさん一家と交渉をして
牧場の一角を買ってスーパーを建て、
その後も次々とお店やレストランがオープンして
細い田舎道は4車線の立派な車道になって
その先には高速道路の入り口もできて、
病院や学校建設の話が来るたびに
ピートさん一家は土地を寄付して、
牧場と森以外なにもなかったところは
小さな町になりました。
茶色のスーツに杖をついて、
教会の廊下で子供たちにお菓子を配るピートおじいさん。
この時期に寒くなると、
ピートさんの牧場にある牛の水飲み場の池から湯気があがって
辺りは濃い霧に包まれます。
霧の中のんびり草を食む牛たちの影を横目に見ながら
この土地が住民とともに歩んできた歴史を思うと、
またちょっとうれしい気持ちになって
今日も私たちは学校に向かいます。
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なんも見えないけど、
三男が車窓から撮った牧場 |