Tuesday, November 24, 2015

小さな町の話 Story of this small town




日曜日に通っている教会に
一人で杖をついて来るおじいさんがいます。

ピートさん、という人で
教会の人がみんな知っている人。

よく子供たちにポケットから出したお菓子を配っていて、
小学生の子供たちのそばでボーっとたたずんでいた私にまで

見かけたことないけど、
引っ越してきたの?

 と、
お菓子をくれて頭をなでたことがありました。  笑


昼間はまだまだ暖かいのでまだ緑の芝生
と、
凍った紅葉の葉っぱ


子供たちを学校に送る道の途中に
牛牧場があります。

間に点々と家があるから
3つか4つの牧場があるのかと思っていたら
奥の方でつながっているらしい。

そこは先祖代々受け継がれてきた
ピートおじいさんの牛牧場です。


私たちが越してきたこの町は
消防署もできたのに
まだ独立した郵便番号がなくって
住所にはちょっと離れた隣町の名前が入っています。

ここ4,5年でどんどん開発が進んで
お店もたくさんできたんだけどね。
私たちが引っ越してきてからの2年の間にも
森や牧場だったところに
大きな住宅地が次々と出没、
大きな町で働く人が帰って来る
ベッドタウンになりつつあります。

それでもまだまだ都会とは程遠いのんびりした環境で
私たちにとってはまだまだ田舎なんだけど、
昔からここに住む住人はみんな口を揃えて
「変わってしまったねえ。。。」と言います。

ここも青々とした元気な草と葉っぱを閉じたクローバー

息子たちの学校に行く時、
ひとつだけ横切るちょっと大きな交差点は
昔は2車線の細い田舎道だったそうで、
今ではデイケアになっている道路脇の建物は
この辺りにあるただひとつのハンバーガーショップで、
地域の人の憩いの場だったそうです。

15年ほど前のある日、
そんな田舎の集落に
大型チェーンのスーパーが来ることに!

みんな便利になると大喜び!

スーパーの偉い手さんが
店じまいした後のハンバーガー屋で
辺りの住民の人達と
会合を開くことになりました。


「ここにある牛牧場ではたくさんのハエが発生して
健康上にとても悪い影響を及ぼしています。
署名を集めて牛牧場を閉鎖させれば、
臭いもなくなるし、ハエもいなくなって
みなさん快適な生活がおくれますよ」

日陰で秋らしい色合いになってる芝生

テンポよく笑顔で話す、
びしっとスーツを着た偉い手さんの話を
住民たちも笑顔で聞いて、
振る舞われたたくさんのジュースやクッキーも美味しくいただいて、
和やかなムードで会が終わってみんなが帰った後、
テーブルの上に置かれたノートの
牛牧場閉鎖の為の署名蘭には
住民の名前はひとつも記入されていなかったそうです。


先祖代々、
地域の人達のお世話をたくさんして、
みんなから慕われていた家族の牛牧場を
ハエや臭いくらいでスーパーの為に閉鎖させようなんて思った人は
誰一人いなかったんだよ


息子の高校のフットボールの試合で隣に座ったお年寄りは
自分のことのように誇らしげに
その当時の話をしてくれました。

そのフットボール場も、
高校校舎も駐車場も全部、
ピートさんが州に寄付した土地に
4年前に建ちました。


日向の芝生はまだまだ青い

結局大型スーパーは正統な値段でピートさん一家と交渉をして
牧場の一角を買ってスーパーを建て、
その後も次々とお店やレストランがオープンして
細い田舎道は4車線の立派な車道になって
その先には高速道路の入り口もできて、
病院や学校建設の話が来るたびに
ピートさん一家は土地を寄付して、
牧場と森以外なにもなかったところは
小さな町になりました。


茶色のスーツに杖をついて、
教会の廊下で子供たちにお菓子を配るピートおじいさん。


この時期に寒くなると、
ピートさんの牧場にある牛の水飲み場の池から湯気があがって
辺りは濃い霧に包まれます。

霧の中のんびり草を食む牛たちの影を横目に見ながら
この土地が住民とともに歩んできた歴史を思うと、
またちょっとうれしい気持ちになって
今日も私たちは学校に向かいます。

なんも見えないけど、
三男が車窓から撮った牧場

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