Tuesday, January 21, 2014

嫌われ者 Neighborhood enemies

 
 
 
 
また冬の嵐が近づいています。
 
 
昨晩は、月も星もない、
見上げるとただ深い闇が重くのしかかってくるような、
そんな真っ暗な寒い夜でした。
夫の帰りは遅いので、
家中が寝静まったあと、戸締りの確認をしてから私もすぐに眠りにつきました。
 
何時ごろだったか、悲鳴が聞こえた気がして目が覚めました。
耳を澄ますと遠くの方で聞いたことのない音が聞こえます。
キューンと鳴く犬ともちょっと違う、小さな子供の悲鳴のような、
か細くて切ない音ですが、悲鳴じゃないとわかるのは、
それが何重にもなって絶え間なしに聞こえるからです。
最初は聞こえるか聞こえないかのかすかな声が、
だんだん、だんだんと近づいてきます。
 
それがコヨーテの群れの鳴き声だと気づいても、
なぜか恐ろしくて窓まで見に行けず、
目を硬くつぶったまま、きちんと閉まったニワトリ小屋と
子猫たちのいる納屋の入り口を思い浮かべました。
 
イメージだけだとオオカミの遠吠えの方がよっぽど怖いと思うのですが、
ヒュンヒュンと聞こえる音は不吉に思えて
悲鳴ではないのだろうけど、なんとも不気味で動けませんでした。
犬たちも怖かったかな? 
その鳴き声以外は家の外も中も、物音一つしません。
 
敷地の向こうに続く森の方から聞こえていたその声は
うちの裏庭を抜けて、昨日作業していた畑を通り、
私が寝ている2階の寝室のすぐ下を通って家の前庭を抜け、
車道を横切って反対側の牧場を走り抜け、その向こうにある森の方角に消えていきました。
 
 
ここ一帯が森だった頃から先祖代々住んでいるコヨーテでしょうか。
そろそろ繁殖期に入るころでしょう。
コヨーテの雌にサカリがつくと、
わざと町や村を駆け抜けて、その匂いで飼われている雄犬を誘うそうです。
匂いにつられて我を忘れた雄犬たちが森まで来ると
最後は待ち伏せしていたコヨーテの群れに襲われて、
食べられてしまうことがあると聞きました。
普段は聞き分けのいい猟犬たちが
突然柵を乗り越えていなくなり、一夜にしてすべての猟犬を失う人もいるそうです。
他にも小さい子供や家畜、ペットが襲われる話など、
悪名高いコヨーテの「いい話」はあまり一般的でないように思います。
 
やることはたぶんオオカミと大差ないと思うのですが、
インディアンがコヨーテの鳴き声を地霊だと信じているという話以外、
研究者がコヨーテと一緒に暮らしたり、
ディズニーがコヨーテが主役の映画を作ったりという話はないですよね?
オオカミが謎に包まれた、誇り高く美しい野生動物なら、
コヨーテは気味の悪い痩せて貧相な獣、くらいの差があると思います。
 
オオカミと違って頭数が増えているコヨーテは要保護の指定は受けてないので、
狩りなどで動物を殺すことに慣れている人たちで
狩猟の期間が過ぎてしまうとコヨーテ狩りをする人がいます。
鹿や七面鳥狩りは食べるためですが、
コヨーテ狩りはただ殺すための狩りです。
どうしてこうも嫌われてしまうのでしょうかね。
 

 
 
暗い夜も、いつも通りやっぱり明けて、
黒かった森が朝日でオレンジ色に照らされはじめました。
 
昨夜コヨーテたちが横切った道路は通勤車両が行き来し、
前庭の花壇の水仙の芽がいくつか折れて、
霜柱の中に無数の足跡がついていました。
もうじきフェンスがしあがると裏庭は安全になるけれど、
コヨーテたちは少し回り道をしないと
車道を横切って森まで帰れなくなりそうです。
 
灰色の犬みたいな風貌だというコヨーテの残した足跡は
ちょうどうちの犬たちくらいの大きさしかなくて、
昨晩は怖かったんだけど、今朝はなんだか不憫に思えてきました。
住む場所を追われ食べるものも少なくなっても、
人間を恨んだり仕返しを企んだりする代わりに
今も賢く生き残っているのです。
 
ロッキーの雄叫びが聞こえて、近所の牛牧場の牛が放牧場に向かう音がします。
人も家畜も目を覚まし、また、一日の始まりです。
そして、夜通し走った獣たちは、
この日の光も届かないような森の奥で
すっかり疲れて、丸くなって眠りにつくところかもしれません。
 
 
 

 
 
 


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